ややネタバレあり感想『スウィング・キッズ』:タップダンスで幸せを掴もうとする人々。その生き様の物語

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こんにちは、Masashiです。

今回は、2018年韓国公開の映画『スウィング・キッズ』:原題『스윙키즈』についてお話しします。

私の大好きな韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』のカン・ヒョンチョル監督の作品。

大人気アイドルグループEXOのD.O.(ドギョンス)が主演ということもあり、ファンの方は既にご覧になった方も多いのではないでしょうか。

2021年7月から、 Netflixで配信開始されてますのでまだ未視聴の方はぜひご覧ください。

できればスマホではなく、PCかテレビの大きな画面、また音響設備も可能な限り整えてご視聴ください。

はっきり言って一生心に残る名作ですので、すぐにご視聴されることをオススメします。

公式予告動画はこちら!!

Netflix入会はこちらから。
月額のサブスク制なのでこれだけ見て退会しても990円で本作鑑賞できます。
正直990円以上の圧倒的価値ありますので、この機会にぜひどうぞ。

本記事は警告後にややネタバレしていきますので、未視聴の方も安心してご覧ください。

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もくじ

『スウィング・キッズ』

あらすじ

1951年、朝鮮戦争下の韓国・巨済島(コジェ)の収容所。ここには韓国・アメリカ軍に捕らえられた北朝鮮・中国軍の兵士が、捕虜として多数収容されていた。

しかし捕虜達は、ジュネーブ協定によってある程度の自由が保障されていた。

収容所の所長は、対外的なイメージ向上のため、捕虜達によるダンスチーム結成を計画する。

チームリーダーに選ばれたのは、戦前に一流のタップダンサーだったジャクソン(演:ジャレッド・グライムス)。

北朝鮮軍の兵士、ロ・ギス(演:D.O.)は、ジャクソンのタップダンスに魅了されるも、敵軍・アメリカのダンスを踊ることを自身で許すことができない。

そんな中、オーディションで寄せ集めのチームが結成され、メンバーそれぞれが自分自身の想いを抱きながらタップダンスを始めるのだが…。

作品背景

本作は朝鮮戦争下の物語。

1950年に勃発した朝鮮戦争は2021年8月8日時点で未だ『休戦状態』であり、終結していません。

余談ですが休戦後、巨済島には大きな造船所が複数作られ、『造船の島』として発展していきます。

私も7年ほど前に一度訪れましたが、中心部は市街地が発展し、海と自然が楽しめて素敵なところでした。

キャスト

  • ロ・ギス役:D.O.(ド・ギョンス)
  • ジャクソン役:ジャレッド・グライムス
  • ヤン・パンネ役:パク・ヘス
  • カン・ビョンサム役:オ・ジョンセ
  • シャオパン役:キム・ミノ

© 2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.

この5人がタップダンスチームを結成し、奮闘していきます。
『サムジンカンパニー1995』で圧倒的存在感のパク・ヘスもメンバーの一人。

■『サムジンカンパニー1995』のレビュー記事はこちら

メインはタップダンスですが、歌唱シーンもあるので、私のようなパク・ヘスファン大歓喜です。

それではこれより映画レビューです。

映画『スウィング・キッズ』感想(ややネタバレあり)

ここからはややネタバレありになりますので、未視聴の方はご注意ください。

俳優ド・ギョンスの底知れない魅力

まずは映画の内容よりも、本作の主人公であるド・ギョンスについて言及せねばなりません。

前述の通り、アイドルグループEXOのメンバーであることは知ってました。

EXOはウルロンの頃からちょくちょく聞く程度…エクセルとは到底呼べないくらいの浅い知識でありました。

ドラマ『大丈夫、愛だ』や、映画『7号室』などでちょくちょく俳優としての活動もしていることはもちろん知っておりました。

ただ、本作で完全に心掴まれましたね。

© 2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.

本作の主人公、ロ・ギスを演じる俳優として必要な素養は以下の通りと考えます。

  • メインの『タップダンス』をマスターできるダンスの素養
  • 北朝鮮軍の兵士として信念を持った精悍な顔立ち
  • その反面、タップダンスに巡り合い、夢中で自己表現をする時の純朴な表情
  • それらを魂を乗せて表現できる演技力

このどれかでも欠けると、ロ・ギス役は務まらないと考えます。

そんな中、抜擢されたド・ギョンスは全てにおいて完璧で、まさに「この人以外は考えられない」というほどの適役。

ロ・ギスという男のドキュメンタリー映画ではないかと錯覚するほど。

作中でロ・ギスがタップダンスにのめり込むように、私は映画の世界へ没入していきました。

それもひとえにド・ギョンスの演技力によるところが大きかったでしょう。

もちろん他の役者さん方も素晴らしかったのはいうまでもありません。

この点は、カン・ヒョンチョル監督のキャスティングのうまさですね!

『サニー 永遠の仲間たち』の時と同様、心の底から感服です。

立場、信条を超えて人々を一つにした『タップダンス』。
この涙の成分は…

本作のエンドロールで、思わず涙が流れてきました。

私自身、「なぜ自分は泣いているのか?」と自問しました。

涙の理由は、悲惨な結末への悲しみでも、当時の人々への憐れみでもありません。

必死にもがく人々の生き様そのものに、強く心を揺さぶられたからです。

最初は寄せ集めで、不釣り合いで、未完成なメンバー達。

みんな立場や心情は違えど、家族や友人のために想いは同じなはず。

だけど、現実はあまりにも重く、目を背けたくなるほどに苦しい。

そんな彼らが、戦争からは遠い存在の『タップダンス』で、それぞれの思いを胸に、一生懸命もがきながら、幸せを掴もうとする。

これは、プロバガンダ色の強い反戦映画でも、お涙頂戴のチープな感動物語でもない。

思想の抑圧と統制の中、「空を飛ぶ鳥のように自由に、夢を掴みたい」と心から願う人々の生き様の物語。

© 2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.

「ファッキンイデオロギー!」

時代に翻弄された人々が、燃えるように熱く、ふつふつと沸き立つ感情を、
奇しくも収容所という場所で巡り合ったタップダンスで爆発させる。

俺たちも鳥のように自由に夢を叶えたい。

イデオロギーなんてクソ喰らえ!!!

こんなにも心に訴えかけてくる、ソウルフルな映画があったでしょうか?

本作は重苦しい題材であるからこそ、『抑圧された人々』の沸る想いを最大限に描き切ることができたのだろうと言えます。

この記事を書いていて、本作の魅力を伝えきれないのが本当にもどかしい・・・!!!

今すぐ見ていただきたい超オススメ作品と繰り返しお伝えします。

ポン・ジュノだけ知ってるのはもったいない!
韓国が誇る映画監督カン・ヒョンチョル

個人的に、カン・ヒョンチョル監督の『サニー 永遠の仲間たち』(2011年)も名作。

ユーモアとシリアスのバランスが秀逸な監督さんですね。

作風として見られる点で、本作『スウィング・キッズ』と同様、安直なお涙頂戴モノに走らないところが大好きです。

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このカン・ヒョンチョル監督、現在新作を撮影中!!

2021年韓国公開予定で、タイトルは仮ですが『ハイファイブ』(原題:하이파이브)とのこと。

キャストがなかなか渋く、ユ・アイン、ラ・ミラン、アン・ジェフン、キム・ヒウォン等。

あらすじは…
超能力者から臓器移植された5人が超能力を引き継ぎ、ヒーローとして活動する内容。

同じく超能力を持ちながら、それを悪用する敵と対決するという話です。

設定はSFチックですが、シリアス寄りなのかコメディ寄りなのか、テイストまでは不明。

2021年6月1日から撮影スタートしておりますので年内公開予定とのことです。

CINE21 2021年6月1日版より引用(元サイト韓国語)

「間違いなく面白い」と韓国でも話題になってるようですので、今から日本公開が楽しみですね…!!

おわりに

いかがだったでしょうか。

時代背景が朝鮮戦争下の物語であるので、精神的に元気な時に見るのがオススメです。

ただ、当時の否応なく戦争にかり出された人々の存在や、現在も休戦状態が続いていることは紛れも無い事実です。

「隣国の過去の歴史」と一蹴するのではなく、その事実を認識して反芻することこそ、
韓国映画ファンである私が持つべきリテラシーであるとも考えます。

今一度自分自身への戒めとして書かせていただきました。

エンディング曲はビートルズの「Free As A Bird」を使用。

ビートルズの楽曲を使用したのは本作が韓国映画史上初。交渉に時間がかかったようです。

その点でも意味深い本作。

皆さんの心にもきっと、深く残り続ける作品だと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。
今後も様々な映画紹介・レビューをしていきますので良かったらまたご覧ください。