ややネタバレあり考察『ビューティー・インサイド』:本当の愛とは?正面から投げかけてくるラブストーリー

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こんにちは。Masashiです。

今回は、2015年韓国公開の映画『ビューティー・インサイド』(原題:뷰티 인사이드)についてお話しします。

日本でも2016年に公開され、上野樹里が出演した韓国映画ということでご存知の方も多いのではないでしょうか。

しかし、キャストが多すぎるが故に、上野樹里はその中の一人という位置付けになっています。

(C)2015 NEXT ENTERTAINMENT WORLD. All Rights Reserved.

というのも、本作は主人公のウジンを演じるキャストが123人に及ぶからです。

どういうことかというと…本作の主人公ウジンは18歳の時から、目覚めるたびに外見が変わる奇病というお話。

性別、年齢、人種…1日として同じ外見の日はありません。

そのため、123人のキャストが一人の主人公ウジンを演じるということです。

もうこの設定の時点で「ムチャクチャな設定だな」と思われるかもしれません…。

しかし本作は緻密な脚本でそれを感じさせない傑作!!

公式予告動画はこちら!

そんな奇妙な運命に晒された青年ウジンの恋愛を描く、韓国映画界が誇るラブストーリーです。

2021年8月22日時点で、NetflixAmazon Prime Videoで配信中ですので未視聴の方はぜひどうぞ。

本記事は作品の感想・考察です。
ややネタバレしていきますので、未視聴の方はご注意ください。

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もくじ

映画『ビューティー・インサイド』

あらすじ

家具職人の青年ウジンは、18歳の時から目覚めるたびに外見が変わるようになった。

性別、年齢、時には人種まで、なんの法則性もなく毎日変わる外見。

そのことを知っているのは母親と、親友のサンベクのみ。

そんな奇病に悩まされるウジンはある日、イスという女性に出会う。

どんな外見でも平等に接してくれるイスに惚れたウジンは、端正な顔立ちの日にイスをデートに誘って親密になる。

しかしどんなにルックスが良くても、寝て目覚めると結局は外見が変わってしまうウジン。

ウジンは勇気を出して、イスに自分の秘密を打ち明けることにしたが…。

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キャスト

  • ホン・イス役:ハン・ヒョジュ
  • サンベク役:イ・ドンフィ
  • キム・ウジン役:キム・デミョン、 ト・ジハン、ぺ・ソンウ、パク・シネ、イ・ボムス、パク・ソジュン、キム・サンホ、チョン・ウヒ、上野樹里、イ・ジェジュン、キム・ミンジェ、イ・ヒョヌ、チョ・ダルファン、イ・ジヌク、ホン・ダミ、ソ・ガンジュン、キム・ヒウォン、イ・ドンウク、コ・アソン、キム・ジュヒョク、ユ・ヨンソク・・・etc

この通り一流どころの俳優陣が揃ってます。超豪華で韓国映画ファン歓喜です。
各キャストを画像付きでまとめた記事をご覧ください。
>>【完全版】映画『ビューティー・インサイド』のキャスト総まとめ

私が『サムジンカンパニー1995』で大好きになったコ・アソンも出てます!!
■サムジンカンパニー1995のレビュー記事はこちら

「この俳優さんをこんな一瞬しか使わないの?」のオンパレード。

そんな贅沢さも楽しめる珍しい作品、それではこれよりレビューです。

映画『ビューティー・インサイド』考察

ファンタジーすぎる設定を現実的にする要素

この設定、どちらかというとコメディにしやすい設定ではないでしょうか。

または、真面目に見るのがバカバカしくなるほどの雑な映画になる危険性を孕んでると思うんです。

しかしそんな心配は全くなく、地に足ついた大人のラブストーリーにしっかり仕上がっています。

それを支えるキャスト陣の演技力と、シックでメロウなBGMはもちろんのこと…その他の要素も重要です。

小物類の使い方

冒頭、ウジンが目覚めるシーンから物語はスタートします。

いきなりのトンデモ設定で、我々観客は正直戸惑ってしまいます。

ただ、ここで上手なのが『小物類の使い方』ですよね。

ウジンが18歳の頃から悩まされている奇妙な現象に対し、自分なりに対処法を確立している様をうまく描写しています。

例えば、外泊して起きたらふくよかな男性になっていたシーン。

持っていた輪ゴムでデニムのウエストを調節していました。

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また、小物類が一覧で並んでるシーンもありましたね。

メガネ、指輪、靴、男物女物それぞれ豊富なバリエーションが揃っていました。

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ウジンにとっては18歳からの日常であって、慣れたことなんだなぁと認識させられます。

このあたりが序盤で描かれていないと、観客の細かい疑問が積み重なり、置いてきぼりのまま物語が進んでいく気がします。
(特に私のようなヒネクレは特に。。。)

「この人毎朝どうしてるんだろう」という観客の小さな疑問を序盤で一気に解消しているので、その後の展開がスッと受け入れられます。

親友サンベクの存在感

下品だけど親友想いのイイやつ、サンベク。

この人の存在も、本作に現実味を与えるエッセンスとして非常に大きい存在です。

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このサンベクは身近にいる『いつまでも下品な学生ノリの友達』というか。

発言も行動もすごく下品なんですが、見た目も含めて「こういう友達いるわぁ」と思わせてくれます。(男性は特にピンときてくれるかなと)

それがあるから、物語自体に親近感が湧くんですよね。

このキャラクターの存在も、作品に現実味を与えてくれます。

緻密な脚本

毎日外見が変わるウジンと、そんな彼を愛するイス。

この二人と同じ経験をした人なんていないはずじゃないですか。

にもかかわらず、二人ともに感情移入できてしまう。

それは、本作が型破りな設定だけで勝負せず、そこからさらに深掘りしているからです。

特にイスの心情描写ですね。

恋人の外見が毎日変わることのストレス、
待ち合わせなのに街中で恋人を見つけられない悔しさ、
それを考慮してくれないウジンへの苛立ち。

丁寧で緻密な脚本とハン・ヒョジュの演技力も相まって、完全にイスの立場に寄り添って見てしまいます。

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序盤は傍観者だった我々観客も、いつの間にか映画の中へ引き込まれています…。

突飛なファンタジーを感じさせない見事な脚本です。

『愛とは何か?』
正面から問うてくる骨太な映画

脚本や細かい描写の素晴らしさはここまでお伝えした通りですが、物語のテーマは『愛とは何か?』という哲学的命題。

『死』と同じくらい普遍的なテーマです。

本作を語る際によく言われるのが「恋人を選ぶ時に見るのは外見か中身か」という論争に結びつけられがちですが、それは少しズレている気がします。

本作のメインテーマは、「外見ではなく中身を見るのが真実の愛」という部分ではありません。

どちらかというと、「自分と一緒にいることが相手の苦痛になると分かった時、どう行動するか?」という部分ではないかと。

というのも、イスはウジンの外見が変わることを早々に受け入れていましたし、その段階でもう外見ではなく内面を見ています。

そもそもウジンがイスに惹かれた理由が「外見で人を判断しない」という部分だったので、これは序盤で終わっている話かと。

本作のメインテーマはもっと深いところにあります。

愛する者同士なのに、相手は自分と一緒にいると苦しんでしまうと知ったウジンが、どうするか?というところではないでしょうか。

その事実を知ったウジンは自ら別れを告げます。

イスのことを思うなら、自分は身を引くべきであると…。

(C)2015 NEXT ENTERTAINMENT WORLD. All Rights Reserved.

故事成語「大岡裁き・こども争い」を連想しますね。

ある子どもの母親を名乗る二人が、「うちの子だ」と子どもの手を引っ張って奪い合う話です。

子どもが「痛い」と言ってとっさに引っ張るのをやめた方が本当の母親だと言われる話ですが。。。

母としての愛、恋人としての愛。立場は違えど、本質の部分は通じる部分があるのではないでしょうか。

自分のことよりも相手を思いやることこそが真実の愛であると。

これこそが本作を通してのメインメッセージであると私は思います。

そして、最後に二人が下した結論は…。

未視聴の方は、ぜひこの機会にウジンとイスが迎える結末をご覧になってください。

おわりに

いかがだったでしょうか。

何やらアツくなって愛を知った風に語ってしまいました。

ちなみに本作、イジワルな見方をすればツッコミどころは割とある作品です。

「海外に行ってたけど、毎日顔が変わるのにどうやってパスポートを取得したんだ?」とか、
「車を運転してたけど、免許証は別人だから実質無免許運転じゃないか?」とか。

ただ、そもそもの設定が設定なので、その辺は目をつぶって楽しむべきではないかと…。

ありえない設定の割には、ストーリーの粗さは感じずに没入できる名作だと思います。

ウジンとイスが下した決断と、作品を通してのメッセージ性を楽しめばいいのではないかと。

最後までご覧いただきありがとうございました。
今後も様々な映画紹介・レビューをしていきますので良かったらまたご覧ください。