『偽りの隣人 ある諜報員の告白』ネタバレなしレビュー:質の高い社会派ヒューマンサスペンス!
こんにちは。Masashiです。
今回は9月17日から日本公開中の作品『偽りの隣人 ある諜報員の告白』(原題:이웃사촌 / 英題:BEST FRIEND)についてお話しします。
韓国歴代興収10位の名作『7番房の奇跡』(2013年)のイ・ファンギョン監督の最新作です。
2020年12月の韓国公開時に初登場1位を獲得した話題作、早速鑑賞して参りましたので感想と考察を。
本作は、軍事政権下の韓国を舞台に、民主化を求め自宅軟禁された政治家と彼を監視する諜報員の心の変遷を描いた物語です。
結論から言うと超オススメですのでぜひ劇場でご覧ください!!
ただ、公開劇場がシネマート新宿など限られているのが残念です。。。
劇場情報はこちら(公式サイトのリンクです)
キャストは大ヒットドラマ『応答せよ1994』でスレギを演じたチョンウ、
『国際市場で逢いましょう』(2014年)などのオ・ダルス、
おなじみ憎たらしい演技に定評ありすぎるキム・ヒウォンなど個性派揃い。
『応答せよ1994』ファンの方は…このスレギ兄さんドアップのメインビジュアルに惹かれると思います。
©2020 LittleBig Pictures All Rights Reserved.
スレギ兄さんは本作でも釜山サトゥリ全開ですので安心して?ご覧ください!!
公式予告動画はこちら!
本記事は作品の感想・考察です。
核心的なネタバレはありません。
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もくじ
『偽りの隣人 ある諜報員の告白』
あらすじ
1985年、軍事政権下の韓国は、国民たちが民主化を求める動きを強めていた。
野党政治家イ・ウィシク(演:オ・ダルス)は、次期大統領選に出馬するべく帰国したが、
出馬阻止を画策する国家安全政策部に逮捕され、自宅軟禁を強いられる。
国家安全政策部の職員デグォン(演:チョンウ)は、上司のキム室長(演:キム・ヒウォン)に命じられ、ウィシクの自宅の隣家で機密情報の盗聴をすることとなる。
現政府の考えと異なる思想を持つウィシクを『悪』と決めつけていたデグォン。
しかしウィシクの一家団欒の様子や国民のことを心から考える言葉を盗聴する中で、自身の任務に対して疑問を持ち始める。
そんな中、ウィシクは『韓国の民主化のため』に出馬をするべく同志と共に計画を練るのだが…。
監督
イ・ファンギョン:『7番房の奇跡』(2013年)
キャスト
- デグォン役:チョンウ
- イ・ウィシク役:オ・ダルス
- キム室長役:キム・ヒウォン
映画『偽りの隣人 ある諜報員の告白』感想・考察
そもそも軍事政権ってなに?
軍事政権が云々…民主化が云々…だとかその辺の時代背景ってご存知なくて当たり前と思います。
いきなり本作を見ても「?」となる部分が多いはずなので少し説明します。
韓国は、1979年に軍事クーデターを起こし大統領になった全斗煥(ジョン・ドゥファン)政権下において、武力を行使して国民の思想の自由を禁じておりました。
政府のやり方に文句があるものは逮捕され、『愛国』の名の下で拷問。誰にも文句を言わせないようにしていました。
当然そんな政権下であれば、思想・信条の自由を求めるデモが全国各地で行われます。
特に大学生が徒党を組み、民主化を求めるデモを盛んに行なっておりました。
そのあたりを描いた作品は『弁護人』(2013年)や、『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年)など、他にもありますのでご興味ある方はぜひ。
その後有名な光州事件でその非人道的な行為が世界に知れ渡ったことと、全国各地でデモが拡大したことで、さすがの軍事政権も武力で鎮圧することが困難になり、
通常の選挙で大統領が選ばれるように改憲されました。
選挙の結果、当然民主化を推し進める政権となり、1987年に民主化を宣言し、現在に至ります。
本作はそんな軍事政権下で、反体制の考えを持つものを収監する役割のデグォンと、国民のためなんとしても大統領になって民主化を実現しようとするウィシク。
相反する2人の、奇妙な関係にスポットをあてた作品です。
悲惨さだけを描くのではなく、ポップな側面も
『7番房の奇跡』(2013年)で親子愛を描いたイ・ファンギョン監督、さすがというべきでしょうか…
悲惨な時代背景の中にもクスリと笑える場面を散りばめ、物語全体のバランスが重くなりすぎない良作になっています。
ウィシク宅を盗聴するのはデグォンをリーダーとする3人のチーム。
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メンバーがウィシクの娘に恋をしたり、盗聴がバレかけたりと、笑いやスリルの要素もあります。
かといって「これ以上ポップになると冷める…」というギリギリのラインを攻めています。
結果として全体のバランスが非常に良く、2時間とは思えないほどの満足感を味わえる…極めて良質な社会派ヒューマンサスペンスに仕上がっています。
相容れない関係であるはずの二人、その行く末は
ウィシクの「国民のためなら命さえ惜しくない」という揺るぎない信念に触れるうち、デグォンは次第に自身の任務の正当性に疑問を抱くようになります。
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『愛国』をいう言葉を信じていたが、自分にとっての『愛国』ってなんだろうか?
国のために職務を全うすること?
国を正しい方向に導くこと?
だったら、この任務は『愛国』と言えるのか?
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デグォンの胸中は保身、愛国、欺瞞…さまざまな考えが入り乱れ、葛藤に苛まれることでしょう。
それでも、上司のキム室長は非情な指令を下してきます。
自分自身が信じてきたものが揺らぐ中、デグォンが出した答えとは。
そして、命を懸けても国を変えたいと行動するウィシクの行く末は。
ぜひ劇場でご覧ください。
オ・ダルスはやっぱり韓国映画に必要不可欠
本作は2018年にセクハラ疑惑で活動休止していたオ・ダルスの2年ぶりの復帰作となります。
実は本作は2018年に撮影していたがオ・ダルスの一件で公開が無期限延期になっていたとのこと。(出典:スポーツソウル電子版2020年11月12日)
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セクハラ疑惑に関しては真偽も分かりませんし本人も謝罪しているので言及しませんが、やはり韓国映画界には必要不可欠な存在であると再認識しましたね。
お世辞にも外見がいいとは言えないんですが、
圧倒的な表現力で映画終盤にはすごく魅力的なおじさんに見えてくるんですよね。。。
イ・ファンギョン監督が『7番房の奇跡』に続いて起用するのも納得です。
賛否はあるでしょうが、再びスクリーンでオ・ダルスが見れること自体はイチ映画ファンとして非常に嬉しいですね。
おわりに
いかがだったでしょうか。
予告編だけ見ても物語がイメージしづらい映画だと思いますが、本記事を通して少しでも関心を持っていただけたら嬉しいです。
ちなみに観賞後、まわりの人の感想を盗み聞きするのが恒例なんですが(悪趣味)、総じて高評価でした!
題材としているテーマは重たいかもしれませんが、世代問わず楽しめる良作です。
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最後までご覧いただきありがとうございました。
今後も様々な映画紹介・レビューをしていきますので良かったらまたご覧ください。