『新感染 ファイナル・エクスプレス』感想:韓国が誇るゾンビ映画の傑作!
こんにちは。Masashiです。
今回は、2016年に韓国公開、2017年に日本公開された映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(原題:부산행・釜山行)の感想記事です。
韓国の首都ソウル近郊で、人々がゾンビ化する謎の感染症が発生。時速300km超で進む釜山行きの列車の中で感染爆発して巻き起こるノンストップ・サバイバル。
日本でいう新幹線にあたる、韓国のKTX(読み方はそのままケー・ティー・エックス)が舞台。
原題の『부산행』は日本語直訳で『釜山行き』ですが、日本版のタイトルは分かりやすく『新感染 ファイナル・エクスプレス』になったようです。
※あらすじレベルのストーリーは述べますが、結末含む核心的なネタバレはありません。
また、劇中で「ゾンビ」というワードは出てきませんが便宜上「感染者」のことを「ゾンビ」と表現します。
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もくじ
映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』
あらすじ
(C)2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved.
主人公のソグ(演:コン・ユ)は仕事一筋で妻と別居中。一人娘のスアン(演:キム・スアン)と実母と暮らしていた。娘からの「誕生日は釜山にいるお母さんに会いたい」という要望に応え、ソウル発・釜山行きの列車に乗りこむ。
そんな中、発車直前に乗り込んできた様子のおかしい1人の女性。
女性は次々と乗客に噛みつき、乗客達はゾンビのように凶暴化して人を襲うようになってしまう。
既に発車している列車の中で地獄の状況であるが、ソグとスアンは他の乗客たちと協力し『安全地帯』の釜山に到着するまで生き延びようとする…。
ソウル駅から釜山駅の地理的関係
ソウル駅は、韓国の首都・ソウルの中心部にあります。地図で見ると韓国の左上の部分。一方、釜山駅は地図で見ると右下の部分。
KTXソウル駅発・釜山行きの列車は、韓国の左上から右下まで2時間40分かけて運行します。
本作では、列車内で「釜山は感染が広がっていない安全地帯だ」という情報を入手し、このまま列車に乗って釜山に到着さえすれば生き延びられると信じて協力することになりました。
しかし、凶暴なゾンビと2時間超も同じ列車で過ごさなければならないことは、何より困難だったのでした…。
公式予告動画はこちら!
『新感染 ファイナル・エクスプレス』キャスト
- ソ・ソグ役:コン・ユ
- スアン役:キム・スアン
- ユン・サンファ役:マ・ドンソク
- ソンギョン役:チョン・ユミ
- ミン・ヨングク役:チェ・ウシク
- キム・ジニ役:アン・ソヒ
- ヨンソク役:キム・ウィソン
監督
ヨン・サンホ監督です。もともとはアニメ監督出身の方。
ちなみに本作『新感染 ファイナル・エクスプレス』はヨン・サンホ監督による3部作の一つ。以下のような構成になっています。
- 『ソウル・ステーション/パンデミック』(2016年)・・・前日譚のアニメ映画
- 『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)
- 『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020年)・・・4年後を描いた続編
余談ですが、ヨン・サンホ監督が手がけるドラマ『地獄が呼んでいる』(Netflixオリジナルシリーズ)は2021年11月19日に配信開始。
異世界から突如現れた地獄の使者が、人々に地獄行き宣告して焼き殺す。その混乱に乗じて台頭する宗教団体の動乱を描く物語です。
原作はNAVER WEBTOONです。韓国語が分かる方はこちらからどうぞ(外部リンクです)
公式予告動画はこちら。
余談が長くなりました、これより感想です。
映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』感想
「B級映画だろう」という食わず嫌い
結論から申し上げますと、見て損はありません。むしろ超オススメ作品です。
基本的に当ブログでは私の主観でオススメしたい作品のみ取り上げるのですが、本作を「ただのB級映画だろう」と敬遠されている方にこそご覧いただきたい作品。
敬遠する気持ちは分かります。私も鑑賞前はそうでしたし、友人の中には「新幹線をもじったコメディチックな作品だ」と勘違いしている人もいましたので…。
私も韓国映画にそれほど関心がなければ間違いなく見ないだろうというB級感、それは否定できません。
しかし、そんなことも吹き飛ぶほどの鑑賞後の充実感。
その理由には2つの要素があります。
①高速列車という閉鎖的環境×ゾンビという斬新な組み合わせ
②ゾンビと対極にある『愛』を描く
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順に説明します。
魅力①
高速列車という閉鎖的環境×ゾンビという斬新な組み合わせ
本作のゾンビは、従来のゾンビと異なる特徴があります。ゾンビの生態は詳しく説明されていませんが、主には以下の3点。
- 身体能力は人間時代と同等かそれ以上
- 噛まれてから発症までのスピードが比較的早い
- ゾンビは視覚のみで人間を判別する
まず、ゾンビ達は全速力で走ってきます。ウォーキングデッドのようにノロノロと歩く死者ではないので感染拡大ペースも早く、あっという間に韓国全土に伝播します。
ソウルから見て最果ての釜山しか安全地帯は残っていないのも納得です。
主人公たちのフィールドは、逃げ場がない列車内。
一時停車した駅で列車の外から追ってくるゾンビもなんせ速いので、その疾走感が我々のハラハラを助長してくれるいい要素です。本作は列車ものであり、ゆっくりなゾンビだと成立しない部分もありますので。
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そして、列車だからこその仕組みを利用する展開に作品としての巧みさを感じました。例えば、ゾンビは視覚のみで人間を判別するので暗いトンネル内では動きが止まるのですが、その部分をうまく利用して窮地を乗り越えるシーンがあります。
単に列車を舞台にしているだけではなく、そういったディテールを通して、他のゾンビ作品としっかり差別化できています。
つまり、列車だからこそ生まれる展開が作品のオリジナリティを生んでいます。
また、列車という小さな箱の中で、極限の人間による群像劇を濃厚かつ壮大に描いています。それが次に述べる部分です。
魅力②
ゾンビと対極にある『愛』を描く
ゾンビ作品で焦点が当たるのは、やはり混乱の中での人間同士の争いです。
本作にも、とにかく自分さえ助かればいいと考えているクラッシャーであるおじさんが登場します。1人であそこまでかき乱せるのも才能ですね。
人を身代わりにしてでも自分は助かろうというムーブばかりで、終始胸糞悪いのですが…。
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ただ、そんな人間の醜い部分だけではなく美しい『愛』の部分も描いています。
本作は大きく分けて3組のグループの物語があります。
①夫サンファ×身重の妻ソンギョン
②高校球児ヨングク×マドンナ・ジニ
③父ソグ×娘スアン
この異常な状況の中で、それぞれが大切な人を優先し自らが犠牲になろうとします。
悲しくも、「正直者が損をする」状況です。クラッシャーおじさんの一貫した行動は、ある種正しいのかもしれません。
私も、「もし自分が同じ立場ならどうするか?」と置き換えて考えてみると、あそこまで酷くはないにしても似たような行動をとってもおかしくはないなと感じます。
ソグも冒頭の考えなら同じ行動をとってもおかしくないです。車内がパニックになっている際、お年寄りに席を譲った娘に対し「こんな時は自分だけ良ければいいんだ」と利己的でシビアな考え方を押し付けていました。実際に序盤に一度、まだ見知らぬ関係だった段階ではあるもののサンファを見捨てようとしましたからね。
しかしソグは周囲と協力していく中で、そして娘・スアンを助けようとする中で大きく変わっていきます。
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それは初めて父親としての自覚が芽生えたからではないでしょうか。
皮肉にも嫌々乗り込んだ列車の中、この地獄の状況がソグを『真の父親』にさせました。
本作は単なるパニック映画にとどまらず、物語を通して父ソグの変化、そしてこれ以上なく暖かい人間の『愛』を描いています。
【余談】本作のもう1人の主人公
このコワモテのおじさん、マ・ドンソクという俳優さんなんですが本当にかっこいいです。
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マ・ドンソク演じるサンファの、妻とお腹の中の子を想っての行動は涙を誘います。
口は悪いけど正義感が強くて、ピンチの時には自分が真っ先に立ち向かう姿、本作で一番かっこいいんじゃないかと思います。
チンピラ風スーツの着こなしも最高なんですよね。
この人が本作のもう1人の主人公だと思っています。
邦題に関する議論
邦題が『新感染』に決定した際、「なぜダジャレみたいなタイトルにしたんだ、直訳の『釜山行き』でいいだろう!!」と物議を醸しておりました。
ご指摘はごもっともかと思いますが、タイトルの覚えやすさという観点からはピカイチではないでしょうか。
友人やオススメの韓国映画を聞かれた際は、「新感染っていう映画、タイトルはダジャレだけど面白いよ」とオススメしています。
オススメされた側もタイトルを思い出しやすいのではないかと。その意味で『新感染』という邦題は、案外悪くないなと思っております。
おわりに
いかがだったでしょうか。
ぜひ見ていただきたい作品です。ゾンビ作品ですが、グロテスクな描写は比較的少なく、その部分に抵抗がある方にもオススメです。
また、コン・ユとマ・ドンソクがきっと大好きになる作品とも言えます。
今後も様々な映画紹介・レビューをしていきます。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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