映画『ファイター、北からの挑戦者』ネタバレなし感想:ある脱北した女性、その希望の物語

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こんにちは。Masashiです。

今回は11/12より公開中の映画『ファイター、北からの挑戦者』の感想記事です。
初日に早速鑑賞して参りました。

結論、面白かったです。
ぜひご覧いただきたい作品です。

あらすじ・キャスト・予告動画等は先日書いた記事にまとめています。
>>公開前に書いた紹介記事はこちら

それでは早速感想です。
予告編以上のネタバレはありませんので、これから鑑賞される方もご安心ください。

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もくじ

映画『ファイター、北からの挑戦者』感想

(C) 2020 Haegrimm Pictures All Rights Reserved

本作は一人の“脱北者”の女性であるジナにスポットを当てた作品です。

命をかけて“脱北”という選択をした彼女。

子どもの頃に母に捨てられ、中国に残してきた父を呼び寄せるために韓国で孤独な生活を始めます。

その表情から、彼女が耐え忍んできた境遇の厳しさをうかがい知ることができます。

ただでさえ過酷な運命を強いられた彼女を、偏見と孤独感が苦しめます。

部屋で一人、言葉を発することのないジナの表情と息遣いでスクリーン越しに伝わってきました。

そんな中ボクシングに出会い、彼女の生活に一筋の光が見え始めます。

(C) 2020 Haegrimm Pictures All Rights Reserved

本作は無骨で、泥まみれで、人間臭い作品です。
誰しもが生きている中で感じる閉塞感と孤独感の骨頂とでも言いましょうか…。

日本に住んでいる大半の人は“脱北者”であるジナと異なる境遇ですが、どこか感情移入できる部分があるのでは。

誰も周囲に味方がいないような気がして、自分のことを理解してくれる人がいなくて、そんな現状がひどく惨めで…。

それでも、一人きりの人間はいません。友人だったり、恋人だったり、家族だったり。

自分は一人じゃない」と思わせてくれる誰かがいてくれるだけで、みんな「なんとか頑張っていこう」と思えてるんじゃないでしょうか。

『私の闘いは、まだ終わらない。』

公式コピーより引用

ジナの過酷な境遇と平和な我々の日常を比べるのは、彼女に対して敬意が足りないことかもしれません。

しかしこの世界に生まれ、生きている限りずっと毎日が闘いなんだと思います。

それはジナだけでなく我々も皆です。

「辛くても、乗り越えていく」
「転んでも、また立ち上がる」
そんな考えにしてくれる、周囲で見守ってくれる誰かへの感謝の気持ちを思い出すような作品でした。

イム・ソンミここにあり

1986年生まれの彼女は、今年でデビュー14年目。

ドラマ『愛の不時着』に北朝鮮の商人役で出演していましたね。

本作で第25回釜山国際映画祭で最優秀女優賞を受賞しました。

映画・ドラマに多数出演しながらも、長編映画の主演は本作が初めてです。

月並みな言い回しですが、ジナ役は彼女しかいないなと。

鬱々とした感情をオオカミのような鋭い目で表しつつも、それを言葉には出さず、噛み殺すように押し込める演技に注目です。

(C) 2020 Haegrimm Pictures All Rights Reserved

彼女はドラマ『愛の不時着』でも北朝鮮の市場で働く女性を演じ、奇しくも本作と似た背景の役柄です。
とはいえ、本作のジナを演じる上で“言葉の壁”が立ちはだかったようです。

方言の演技は経験しているが、北朝鮮の言葉の難易度は次元が違ったという。イム・ソンミは台本にイントネーションの高低を記入した。本作に出演する俳優イ・ムンビンが延辺出身なので教えてもらったという。彼女は「まるで楽譜を描くように練習した」とのこと。

出典:聯合ニュース2021年3月13日版記事

実際の台本がこちら。

出典:聯合ニュース2021年3月13日版記事

彼女の自然体ながらも力強い演技力は作品の深みにつながっていると思います。

ぜひスクリーンで彼女の熱演をご覧ください。

本作に見る“脱北者”の実情

韓国に入国した脱北者の数は、2011年〜2020年の10年間で13,352人。(出典:韓国統計省公式サイト『北朝鮮離脱民入国現況』)

「想像より多いな」というのが率直が印象ですがいかがでしょうか。

劇中でも描かれていた通り、脱北者の境遇は恵まれているとは言えません。

韓国統一部の統計によると、2020年時点では韓国に来た脱北者のうち10人に1人は自殺しているとのこと。(出典:韓国日報2020年10月7日記事より。原文韓国語)

人間らしい生活を求め命をかけて脱北してきたにも関わらず、韓国でも求めていた生活が手に入らない現状が問題になっています。

本作の予備知識

事前に知っておくと、より物語の理解が深まるポイントをご紹介します。

韓国で再会した母

(C) 2020 Haegrimm Pictures All Rights Reserved

南北で話す言葉は同じ“朝鮮語”ですが、南北で抑揚など異なる点が多いです。

ジナは自分を捨てた母と韓国で再会したのですが、母の話す“朝鮮語”は完全に韓国人の抑揚でした。
字幕での表現以上に、ジナの感じた心理的な壁は大きかったのではないでしょうか。

なぜ父は中国にいるのか?

北朝鮮から韓国への亡命ルートは『中国〜東南アジア経由』がメインだからです。

脱北の流れは…まず中国側の国境警備隊に賄賂を渡して中国に入国。そして東南アジアまで移動した後に韓国へ入国する方法が主流のようです。

北朝鮮から直接韓国に入れば距離的には最短ルートなのですが、国境には地雷原も多いことと警備隊の多さで現実的には困難なようです。

船での密航もあるようですが、海洋警察に見つかるリスクが高いので比較的少ないようです。
>>実際の密航事件をモデルにした映画『海にかかる霧』の考察記事はこちら

脱北方法の詳細については、本作のユン・ジェホ監督の前作『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』(2017年)で描かれています。

AmazonPrimeVideoでご視聴可能です。1時間ちょっとの作品ですのでよかったらどうぞ。

>>『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』をみる

おわりに

いかがだったでしょうか。

何度倒れても立ち上がる、忘れかけていた大切なことを思い出させてくれる本作。
ぜひ劇場でご覧ください!
公開劇場はこちらからご確認ください。(公式サイトです)

11月から、多くの韓国映画が公開されます!!
どれも面白そうな作品ばかりなので楽しみです…。
日本公開予定の作品一覧はこちらの記事にまとめています。

今後も様々な映画紹介・レビューをしていきます。
最後までご覧いただきありがとうございました。