『茲山魚譜 チャサンオボ』感想:“生きる”とは何か。ハッとさせられた作品
こんにちは。Masashiです。
11月19日(金)に公開された映画『茲山魚譜 チャサンオボ』。初日に早速鑑賞してきました。
あらすじ・キャスト・予告動画などは以前の記事で紹介しています。
>>『茲山魚譜 チャサンオボ』紹介記事はこちら
本記事は感想記事ですのでネタバレありません。未鑑賞の方も安心してご覧ください。
そしてぜひ劇場でどうぞ!
>>公開劇場はこちら(外部リンク・公式サイトです)
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もくじ
『茲山魚譜 チャサンオボ』感想
本来出会うはずがない二人の絆
本作は、キリスト教徒迫害で黒山島に流刑になった学者チョン・ヤクチョンが、現地の魚に詳しい若者チャンデと一緒に海洋生物書“茲山魚譜(チャサンオボ)”を作り上げていく物語。
この書物は実在しているものです。
1801年、島流しとなったヤクチョン(演:ソル・ギョング)は、島民のための海洋生物書を作ろうとします。
海の生き物を体系的にまとめた書物があれば効率よく魚が獲れ、食用、薬用などと識別できるからです。
しかしヤクチョンは学問に長けていても魚の知識はありませんでした。
そんなヤクチョンが頼ったのはチャンデ(演:ピョン・ヨハン)という若者。彼の魚の知識と説明に非常に信頼を置いたヤクチョンは、共に“茲山魚譜”を作り上げていきます。
©︎2021 MegaboxJoongAng PLUS M & CINEWORLD. ALL RIGHTS RESERVED.
実際の書物に「チャンデの助言を受けた」という旨の記述があり、彼も実在した人物です。
本作は、そんなヤクチョンとチャンデの絆にフォーカスした物語です。
劇中でヤクチョンは自らの学問の知識と引き換えに、海の知識を乞う事になります。
学問への好奇心はあるものの、貧しさゆえ学ぶことに限界があったチャンデに持ちかけた取引でした。
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かたや官僚階級である両班(ヤンバン)のヤクチョンと、黒山島の漁師チャンデ。
ヤクチョンが島流しになっていなければ出会うはずもなかった二人の絆。
“茲山魚譜”に込められた想いと、モノクロ映像を通して息づく当時の人々の暮らしを体感できました。
チャンデに学ぶ
知的好奇心と行動力
劇中、チャンデは自らの出自による使命感から学問に励んでいました。
支配階級に搾取され続ける周囲の島民を見て「自分は出世しなければ」という考えを抱くようになります。
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そんな中、偶然島にやってきた学者・ヤクチョンとの出会いは千載一遇のチャンスでした。
彼の知的好奇心と行動力に、私も見習わないとな…と考えさせられました。
「自分の現状を変えたい」という気持ちを原動力に、実際に行動に移せる彼のような人間が結果を出すんでしょうね…。
いつかやってくるチャンスをものにできるかどうか、その時まで爪を研ぎながら準備することの大切さを描いています。
成功するかはともかく…行動を起こし、無我夢中で打ち込むことで新たに見えてくることは多いと思います。
何歳になってもチャンデのように学び続けていきたいものです。
“身分制度の悲惨さ”も描く
そんなチャンデの探究心とは裏腹に、当時の現実は不公平なもので…。
官僚階級である両班になるには試験(科挙)に受かることが必須ですが、その試験を受験するにも身分が必要とのこと。
世襲的に代々受け継がれる両班という身分は、身分によってはそもそも試験すら受けられないというもの。
覆せない絶対的な身分制度は、現代の我々からは想像できないものですね…。
役人達の搾取で、庶民達の生活は困窮の極み。
本作は、当時の人々の暮らしぶりを丁寧に描いた作品でもあります。
それはつまり、良いことも悪いことも身近に、生々しく感じさせるということです。
“自然の美しさ”や“2人の絆”という美しいものとは対極にある、“当時の身分制度の悲惨さ”も描いています。
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現代のように多様性なんてなかった、「0か100か」と言っていいほど極端な世界で、ヤクチョンとチャンデはどのような生き方を追求するのか?
世相や出自に翻弄されながらも、自分だけの正解を見つけることができるのか。
現代にも通ずる哲学的な問いを投げかける本作。
非常に面白い作品でした。
チョ・ウジンの配役!
韓国映画をよく見る方なら一度は見たことがある彼、チョ・ウジン。
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とんでもない悪党役で出ることが多いですよね…いつも顔に返り血を浴びてるイメージです。
しかし本作では姑息な小役人として出演していて驚き。彼の人間らしい役どころをお楽しみください。
おわりに
いかがだったでしょうか。
一つの書物に息づく、当時の人々の心にスポットを当てた本作。
ぜひ劇場でご覧ください。
また、2021年11月〜2022年2月にかけて様々な韓国映画が公開されます。
今後の日本公開予定はこちらの記事にまとめていますので、ぜひチェックしてみてください!
>>【随時更新】日本公開予定の韓国映画一覧
最後までご覧いただきありがとうございました。
また次の記事もご覧頂ければ幸いです。
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