『第7回 大阪韓国映画祭』に行ってきた!【5作品感想】
こんにちは。Masashiです。
11月26日-28日の3日間開催された『第7回 大阪韓国映画祭』に行ってきました!
※“大阪韓国映画祭”とは・・・駐大阪韓国文化院さん主催で2015年より開催されているイベント(参加無料)です。
今回もグランフロント大阪北館4階のナレッジシアターでの開催。
“完全事前申し込み制”のため、事前に届いたチケットを持参して入場です。
今回の上映作品は以下の5本。全て日本未公開の作品でした。
- 『息子の名前で』(原題:아들의 이름으로)
- 『光と鉄』(原題:빛과 철)
- 『カモメ』(原題:갈매기)
- 『輝く瞬間』(原題:빛나는 순간)
- 『父親叫喚(ちちきょうかん)』(原題:애비규환)
上記に加え、大ヒットドラマ『イカゲーム』で注目を浴びているファン・ドンヒョク監督の作品『天命の城』も特別上映されました。
原題の『남한산성(南漢山城)』をイカゲームのようなフォントで表現していました。なんともシビれる演出。
『天命の城』は2018年に日本公開もされ、DVDも発売されてますのでご存知の方も多い作品ではないかと。
そのため本記事では日本未公開の5作品を紹介し、それぞれのレビューをしたいと思います。
ややネタバレを含みますが、作品の核心的なネタバレはありません。
また予告動画は日本語字幕ありません。
それではどうぞ!
※以下の『もくじ』から好きなところへ移動できます!
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もくじ
第7回 大阪韓国映画祭
このイベントでは計5作品を金土日(3日間)に各2回ずつ上映。私は26日(金)&27日(土)に参加しました!
約380席あるというナレッジシアターですが、約7割ほど埋まっていた印象です。
1本目:『息子の名前で』
©2021 Hon Film Company Co,. Ltd. All Rights Reserved
まずは1本目『息子の名前で』。
あらすじ
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1980年5月に起こった、韓国現代史上最悪の悲劇“光州事件”。
軍部の武力行使によって、市民に多くの死者と負傷者を出した。
あれから約40年。
事件を主導した当時の軍幹部達は反省もせず、謝罪の言葉すら口にせずのうのうと暮らしている。
事件を忘れられずに未だ苦しむ男オ・チェグン。
彼は大切な息子との約束を果たすべく、軍の元幹部のパクと接触するのだが…。
キャスト
- アン・ソンギ
- ユン・ユソン
- パク・グニョン
- イ・スンホ
- イ・セウン
- キム・ヒチャン
レビュー
1980年5月の光州事件で未だ苦しむ人々の物語。
『タクシー運転手 約束は海をこえて』などで光州事件のあらましをご存知の方は多いかもしれません。
約40年経過した現在も苦しんでる人々がいるわけですよね。。。
アン・ソンギ先生の“くたびれ感”が絶妙でした。
すでに“自分のための人生”を諦めているようで、その反面である部分は「絶対にやり遂げる」という強い信念を感じる表情でした。
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2021年11月23日、光州事件を主導した全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領が死亡しました。
その数日後に本作を見れたのは勝手ながら皮肉めいたものを感じます。
全斗煥氏の妻イ・スンジャ氏が、「夫の在任中、苦痛を受け、傷を負った方々に夫に代わって謝罪したいと思います」(KBC NEWS2021年11月27日記事より)と発言して炎上してましたね。
全斗煥氏が大統領を務めたのは1980年8月27日〜1988年2月24日です。
光州事件は1980年5月18日ですから、この期間に該当しないことになります。
要するに、「お前の夫が主導した光州事件については謝罪する気がないのか」という意味で炎上しています。
妻の本心は分かりませんが、余計な一言だったようですね。
結局、お葬式は元大統領にも関わらず国家葬ではなく家族葬としたようです。
劇中にも描写がありましたが、未だ行方不明の方の遺骨が遺族のもとに還れるよう祈るばかりです。
2本目:『光と鉄』
© 2020 ONETAKE FILM & FILM NEW WAVE, All Rights Reserved
2本目は『光と鉄』。
『はちどり』のパク・ジフが出ていて感慨深かったです。
あらすじ
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自動車同士の事故が起こり、一方の運転手は死亡、もう一方は意識不明に。
この事故で夫を亡くしたヒジュと、意識不明になった夫を介護することになったヨンナム。
事故捜査の結果では、ヒジュの夫に過失責任があり、ヨンナムの夫は被害者であった。
事故から2年経ったある日、ヒジュとヨンナムは偶然再会してしまう。
真実を知る当事者が存在しない中、事故に関する様々な事実が明るみになり、「加害者vs被害者」かと思われた構図は次第にこじれていく。
キャスト
- ヨム・ヘラン
- キム・シウン
- パク・ジフ
- イ・ジュウォン
- カン・ジナ
- チョ・デヒ
レビュー
役者陣の鬼気迫る演技が素晴らしかったです!
“事故の真相”を巡るサスペンスなのですが…「死人に口無し」のため、真実を推論することしかできません。
疑念が残る警察の事故捜査や、事故当事者の生前の発言や行動など。
不可解な点が徐々にあらわになり、展開は目まぐるしく進みます。
「夫の死の真相を究明したい」という目的に取り憑かれ、焦燥していくヒジュをキム・シウンが熱演。
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一方、夫が意識不明になったヨンナムを演じたのはヨム・ヘラン。
パク・ジフ演じる娘ウンヨンと、意識不明の夫を介護する中で溜まる鬱憤。
そんな極限状態の神経を逆撫でしてくるヒジュとの対立は見ものです。
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「何が真実で、何が偽りなのか?」
最後まで揺さぶられながら進んでいく本作、見応えがあったと言えるでしょう。
3本目:『カモメ』
© 2020, DANKOOK GRADUATE SCHOOL OF CINEMATIC CONTENT, ALL RIGHTS RESERVED
3本目は『カモメ』。
あらすじ
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魚市場で長年働く女性オボクは、顔見知りから性被害を受ける。
被害を訴えるも、「年寄りが何を言っているのか」と周囲の反応は冷ややか。
娘の縁談や市場の人間関係。周囲のことを考えると、泣き寝入りせざるをえないのか。
苦悩と葛藤の末、オボクが選んだ答えとは…。
キャスト
- チョン・エファ
- チャン・ユ
- コ・ソヒ
- キム・ガビン
- キム・ビョンチュン
レビュー
当方、男性のためあまり言及しにくい内容であります。
性被害にあった女性の周辺の人々の理解の無さと、人権を著しく軽視した発言に身の毛がよだちます…。
同様の作品で、実際にあった事件を描いた『69歳』(2020年)がありますね。
周囲の“同調圧力”に屈することが多い世の中ですが…負けじと、声をあげねばならないことも時にはあるでしょう。
人間の尊厳について普遍的な問いを投げかける作品でした。
4本目:『輝く瞬間』
2020 Copyright© MYUNG FILMS & WHENEVERSTUDIO ALL RIGHTS RESERVED
4本目は『輝く瞬間』。
あらすじ
2020 Copyright© MYUNG FILMS & WHENEVERSTUDIO ALL RIGHTS RESERVED
済州島の海女さんジノクは、ソウルからきたテレビマンの青年・ギョンフンからドキュメンタリー番組の申し入れを受ける。
よそ者を嫌うジノクは、軟弱なギョンフンに敵意丸出し。
ギョンフンはジノクの仕事を手伝い、信頼を勝ち取って番組撮影の承諾を得る。
撮影を通して、2人は互いの辛い過去を打ち明け、共に美しい海に悲しい記憶を持つことを知る。
そして、ジノクはギョンフンに対して今まで感じたことのない気持ちを抱き始める。
キャスト
- コ・ドゥシム
- チ・ヒョヌ
- ヤン・ジョンウォン
- チョン・へジン
- キム・ジュンギ
レビュー
済州島の海女さんジノクと、テレビマンの青年・ギョンフンの歳の差を超えた恋。
一見、突飛な設定ではありますが極めて真っ直ぐな作品。
なのに、会場に嘲笑されてる方が多かったのは少し残念でした。
(さすがに最後まで笑ってる人はいませんでしたが)
ややネタバレになりますが、大切な人を失った2人が心をぶつけ、過去を吐露する中で当事者だけの世界ができあがる過程は皆さん見ていたはずです。
後悔と葛藤の日々で、彼らにしか分からない何かがそこにはあったはずなんですよ…。
そんな彼らの『輝く瞬間』は非常に美しいとすら感じましたが、映画という極めて限られた尺の中で、やや展開が早くなってしまったのではとも思います。
感情の機微がもっと時間をかけて描かれていれば、一部の観客の方々の受け取り方も違ったものになったのかもしれません。
本作の大きなテーマとなる、彼岸花(韓国語で相思花)。
茎が伸びて花が咲き、花が散った後で葉が出てくるという不思議な特徴があると言います。
花が咲くときに葉がなく、葉が育つときには花が咲かず。
花と葉が互いに恋しいと思うところから“相思花(サンサファ)”というそうです。
韓国における花言葉は、「達成できない恋」。
そして日本における花言葉は、「悲しい思い出」。
相思花のような本作の行く末を、ぜひ皆様にもご覧いただきたいです。絶対に日本公開してほしい…!!
個人的には大満足の作品でした!!!
5本目:『父親叫喚(ちちきょうかん)』
(c) 2020 Little Big Pictures All Rights Reserved.
5本目は『父親叫喚(ちちきょうかん)』。
あらすじ
(c) 2020 Little Big Pictures All Rights Reserved.
大学生のトイルは、高校生男子のホフンの子を妊娠したことが発覚。
母と継父は「収入がない学生の2人に子育ては無理だ」と猛反対。
トイルは自身の妊娠をきっかけに、幼い頃自分を見捨てた実の父親と会ってみたくなった。
しかし探し出した実の父は想像以上に無責任でだらしない男だった。
そして夫になるはずのホフンは行方をくらまし、何もかもお先真っ暗なトイルだったが…。
キャスト
- クリスタル f(x)メンバー
- チャン・へジン
- チェ・ドクムン
- イ・ヘヨン
- カン・マルグム
- ナム・ムンチョル
- シン・ジェフィ
- チャン・ヘッサル
レビュー
重たい作品が多かった今回の作品陣の中で、唯一のコメディ映画。
コミカルなドタバタ劇を期待してましたが、まさに期待通り。
いや、期待以上に楽しくみれました!
最初から最後まで笑えましたね。
全てがガハハという大味な笑いじゃなく、クスッとするような日常にある笑いをうまく積み重ねていると言いますか。
なのに物語上の家族愛でホロリ、そして人生哲学的要素もあり…。
(c) 2020 Little Big Pictures All Rights Reserved.
日本公開してほしい作品ですね〜万人受けするでしょうし、私のように頭を空っぽにして映画を観たい時がある方にピッタリかと思います。
クリスタル、いい女優さんになりましたね(上から)!
『大阪韓国映画祭』について
2015年の第1回から、今回で第7回目を迎える大阪韓国映画祭。
なんとこのイベントが参加無料という驚き!!試写会のような扱いなのでしょうか…。
このイベントは「韓国映画ファンを増やし、映画を通して日韓両国の文化交流と友好を促進する」という名目で開催されています。
韓国映画の魅力を多くの方に知ってもらおうという素晴らしい取り組みですよね。
前回の第6回(2020年)には、当時日本公開も決まっていなかった映画『ユンヒへ』(原題:윤희에게)が公開されました。
国境を越えた女性同士のラブストーリーで、世界で賞賛されてたクィア映画です。
※ちなみに2022年1月7日(金)に日本公開決定しました!
>>『ユンヒへ』の紹介記事はこちら
このように映画の発掘センスが抜群で、映画好きな方なら絶対に楽しめるイベントだと感じました。
また、現在は渡航制限の関係でストップしていますが以前は韓国の一流俳優も来場していました。
第1回(2015年)には、『チェイサー』、『海にかかる霧』などのキム・ユンソク。
第2回(2016年)には、のちに『ミナリ』でアカデミー賞を受賞するユン・ヨジョン。
そして第4回(2018年)にはファン・ジョンミン!! 『工作 黒金星と呼ばれた男』や『国際市場で逢いましょう』などで言わずと知れた大俳優。
引用:駐大阪韓国文化院HP
早く自由に渡航できるようになって、また韓国の俳優さんたちが来てくれるのが楽しみです…。
来年の作品ラインナップはどうなるのか、今から楽しみです!!
おわりに
いかがだったでしょうか。
おそらく次回(第8回)は2022年の11月頃かと思いますので、次回は皆様もぜひ申し込みしてみてはいかがでしょうか。
最後までご覧いただきありがとうございました。
また次の記事もご覧頂ければ幸いです。
アン・ソンギ カモメ キム・シウン クリスタル コ・ドゥシム チャン・へジン チョン・エファ チ・ヒョヌ パク・ジフ ヨム・ヘラン レビュー記事 光と鉄 大阪韓国映画祭 息子の名前で 父親叫喚 輝く瞬間